新型コロナが流行するようになって、実は破産などの倒産件数は減少傾向にあります。例えば村上若奈「東京地方裁判所民事第20部(倒産部)及び立川支部の破産・再生事件の概況」事業再生と債権管理177号134頁では、東京のデータですが2021年における東京地裁の破産・再生事件の概況が分析されていて、そこでは破産の同時廃止事件(多くは財産が全くない個人の破産です)が前年比で約16.3%減少したとされています。数字が完全には一致しないでしょうが、私のいる鶴岡でも数は減少しているでしょうし、全国的にもその傾向が見られるかと思います。

 新型コロナで飲食業や旅行産業を始めとする多くの会社・個人事業主は経営難に直面したはずです。それなのに破産等が増えていないのは、持続化給付金・雇用調整助成金などの各種助成金の他、各金融機関がコロナ下の中小企業支援のため実質無利子・無保証の融資の積極的な促進がなされ、結果企業の資金繰りが支えられたのが原因と考えられます(上記論文でもその点が指摘されています)。実際に、各種給付金や助成金、金融機関の融資で命をつないだ方も多かったはずです。

 ともかくも倒産さえ防げれば新型コロナ終息後に再開も容易ですし、逆に資金繰りがショートすれば倒産や法的整理が出来ればまだいい方で、中小企業や個人事業主の方の中には法的整理など思いつかず自死を選択する方もいます。賛否両論ありますが、新型コロナ下での中小企業の経営危機と資金繰りを緩い融資などの支援でつないだのは、正しい選択だったのではと私は思います。

 

 私は経済は専門外なのであまり意見を言うべきではないのですが、分不相応を承知で申し上げますと、私は、個人的にこの政府や金融機関のラフな資金繰り支援の姿勢はもうすぐ終わってしまうかも知れないと心配しています。この政策は当座しのぎであり、いつまでも続けられないからです。融資はつまり借金・貸付金ですから原則いつかは返済しないといけないものですし、最近は急な円安で、金融緩和政策をやめて金融引締めを図らなくてはならないとの声も強いです(もう手遅れという意見も目にしましたが)。

 この円安に応じて政府が金融引締めを図るということは、政府もラフな補助金・給付金政策は控え、金融機関は融資の引き上げや今まで猶予していた貸付債権の取立を始める可能性が高くなることを意味します。

 実際、新型コロナは以前流行し終息の兆しも見えないのに、政府は緊急事態宣言などで経済活動を抑止するのを止めています。やむを得ないとは思いますが、それはつまり、政府は経済は今まで通りにするから、企業は今まで通り利益を上げて債務を返済し、納税してくれというスタンスに転換したことを意味するように見えるのです。

 

 そうすると今まで通り、破産や民事再生・個人再生と言った法的整理をやむを得ず選択しなければならない会社や個人事業主がこれからは増えるのではないかと考えています。新型コロナ以来厳しい現実に向き合われている飲食業の方やその他中小企業の方に、さらに厳しい現状が突きつけられることになります。見通しは暗くなるばかりで、嫌になります。

 

 ただ、債務の整理の手段についても、破産や民事再生といった法的整理以外にも、自然災害債務整理ガイドライン新型コロナ特則や、経営者保証ガイドラインに基づく手続など、よりマイルドな選択肢も増えました。

 当事務所でもこれらの選択肢を踏まえ、金融引締めに伴う経営難にお困りの方のお力になれたらと思います。

 もしお困りになったら、ぜひ当事務所にご予約下さい。お力になれるかと存じます。