数日前に、山形新聞で「鶴岡市 ロンドン市場開拓へ」という記事が掲載されているのを拝見しました。どうやら「ロンドン市場開拓チャレンジ事業」と銘打って、鶴岡産の農産物のPRするのを強化するとのこと。

 

鶴岡市の農産物のロンドンへの進出の試みというのはこれが初めてではないようです。鶴岡市の株式会社井上農場さんの下記サイトに詳しいですが、2021年にはロンドンで「山形フェアinロンドン」が開催されています。

https://inoue.farm/blog-mehia/2597/

 

日本の農業のこれからの発展のためには、海外展開というのが重要です。すでに井上農場さんはじめいろんな方がいろんなところで頑張っている分野ではありますが、私もひそかに応援しています。鶴岡の農産物、美味しいですしね。

 

このような流れに水を差すようですが、弁護士として心配なのは法務の面です。農業法務は他の法分野と比べて研究が進んでおらず、農業法務に詳しい弁護士というのは少ない分野だからです。

海外進出や商品の海外輸出をする際は、国内取引の場合と違い、訴訟で解決するというのが難しく、コストベネフィットが全然合わないことが多いです。理由はいくつかありますが、簡単に述べれば、日本の法律や法廷に持ち込めないことが多く、英国法(イングランド法)での訴訟による解決は日本の企業にとってはかなりハードルが高い、ということでしょうね。日本で訴訟で解決するのにだってハードルは高いのに。

 

そのため、一般に海外展開の場合、そういった紛争を事前に予防する予防法務が重要になってきます。具体的には①契約書の精査、②現地の規制の調査などです。また農業法務に固有の問題として、③農産物の知的財産法上のケアをしないと、現地で日本の農産物が栽培されて日本の農産物を売るのが困難になる、というリスクもあります。

この理由から、他の産業で企業が海外進出するときは、法務部や顧問弁護士などが法務のケアをすることが多いのですが、農業法務についてはこの点にまで手が回っていないのではないかを懸念しています。

 

農業法務は当事務所でも扱っていますし、当事務所では海外展開に付随する予防法務についても他の事務所と共同してケアする体制を整えています。別に当事務所でなくてもいいので、海外進出に頑張る農家や企業の方、自治体の方々に対して、農業法務に詳しい弁護士らによるケアがなされていることを祈るばかりです。