法律相談サイトの相談をたまに回答させて頂くのですが、それらのサイトでは、最近児童ポルノ関連の相談が多くなりました。

 ダウンロード違法化に伴い、ただ興味本位で動画サイトからダウンロードしてしまったり、誰かから送ってもらったりしてしまった、自分は捕まるのだろうか、といったものです。

 正直、私には気持ちはよく分かります。私は児童ポルノを好んで見るわけではありませんが、子ども相撲の写真が児童ポルノに該当するのでは、という議論があったりして、処罰範囲はかなり広く不透明です。素人の方だと不安に駆られても仕方がないと思います。

 

 ただ、回答する方からしますと、かなり答えづらいです。私も、ネットだとなかなか回答して差し上げられません。司法試験受かっただけだと適切に回答するのは困難なくらい、難しい法分野です。理由を二つ以下に示します。

①資料が少ない。

 他の法律と違い、概説書などに乏しいのが現状です。この理由は明らかではありませんが、(1)覚醒剤取締法などと違い、議員立法で行われたため、法務省の審議会や法改正に向けた調査などが行われていないこと(2)議員立法のため、学者が研究をそれほど行っていないこと、などが考えられます。

②基準も運用も曖昧。

 児童ポルノ法に限らず猥褻物関連一般に言えることですが、基準や運用が曖昧です。児童ポルノにも定義規定はあるのですが、境界線はそれほど明確ではありません。そのためたびたび、子ども相撲の写真や幼稚園・保育所のアルバム、タレントの授乳写真などが児童ポルノにあたるのでは?と話題になってしまうのです。

その理由を掘り下げると、(1)そもそも誰の何を守るための法律なのか不明である、(2)猥褻物規制と同様、何が猥褻なのか人によってまちまちで、時代によっても変わりうるため、明確な判断基準が定立しにくい、(3)窃盗や暴行などと違い、多くは被害者なき犯罪であるため、どうすれば処罰の必要性がなくなったか分かりにくい。(4)薬物事犯と違い、悪質性が事件性によってばらつきがある、などが考えられるところです。

私の調べた限りでは、これは日本に限ったことではなく、世界的な傾向です。そのため、他の法分野と違い、外国の議論を参考にしようとしても解決できません。外国でも似たような悩みを抱えているのですから。

 

・・・ということで、児童ポルノ法に関するネットでの相談を拝見すると、いつももどかしい思いになります。答えて差し上げたいのに答えてあげられないのです。

 この状況が解決すればいいのですが、その兆しもみられません。