私もたまに法律相談サイトで回答させて頂くことがあります。よく言われているような宣伝効果は実際はあまり期待できず、多くの弁護士はボランティア精神か弁護士としてのスキルの鍛錬のために回答しているように見えます。私は後者で、自己鍛錬のつもりで回答させて頂いております。

 

ただ対面で相談して頂ければ回答できるけど法律相談サイトでは回答しづらい相談、というのが最近は多くなりました。いろいろ類型があるのでまたここで書くかも知れませんが、代表的なのは男女関係の間の金銭トラブルですね。特に最近はマッチングアプリなどを利用してパパ活をする方が多いみたいで、その中でお金を貸したが返してもらえないとか、お金を渡してくれないが請求できるのかとか、もらったお金を返さないといけないのか、とか。そのタイプの相談が法律相談サイトでは目立つようになりました。

 

回答しづらい理由は大きく分けて二つあります。

まず、①非常に細かくいろいろと具体的な事情を聞かないと法的判断が困難ということが挙げられます。金銭のやり取りについては主に(ⅰ)肉体関係の対価なのかどうか、(ⅱ)返す約束を暗黙のうちにでもしたのかどうかが重要なのですが、それらの判断をするためには普段からパパ活している方なのかどうかとか、どういう経緯で会うことになったのか、どういう経緯でお金を渡す/貸すことになったのか、事前事後のやりとりはどのようなものなのか、それぞれに証拠はどの程度あるのか・・・お聞きしなければならないことはたくさんあります。これが対面であれば気になることをその場で聞けばいいのですが、サイトでのやりとりだと細かい質疑は質問する方も回答する方も時間がかかりますし、疲弊もします。

次に、②貸し借りの場合は返還約束をしたのかが微妙なケースが多いということです。これはパパ活に限らず昔から男女関係の間での金銭のやりとりで多いのですが、うまく行っている間は気前よくお金を上げていて返せなんて話ぜんぜんなかったのに、仲がうまく行かなくなった途端全部返せという話がたくさんあるんですね。そうでないというためにはお金を渡した時に、返すという合意を当事者間でしていないと厳しいのですが、たいていの場合そのあたり曖昧なのです。そのニュアンスが、サイトでのやりとりは把握しにくい。

 

以上の2点から、男女関係の金銭トラブルは回答しづらいんですが、法律相談サイトではこの類型に関わらず、サイトでは回答しづらい類型相談というのはたくさんあります。無料もしくは低価格で相談できるので利用者の方には便利なのは重々承知なのですが、弁護士の私としては、そこでは回答できない相談も多いということはもっと知られてほしいところです。