当事務所では農業法務も取り扱っています。

私は実家が農家なので農業法務は好きなのですが、農業法務については、実務家として悩ましい面が3点あります。

1 法律問題が起きがちな身近な分野ではあるが、法分野としてはとても難しい

道交法でもそうなんですが、えてして生活しているうえで身近な悩みが、法律問題としてはとても難しいというのはよくあります。農業法務についても、司法試験に受かったくらいでは全く太刀打ちできないほどです。

そういう時、相談者の方に納得して頂ける回答が出来ず、内心残念な気持ちになることも多いです。

2 農業法学は研究があまり進んでいない

農業法学は、法律学としてはあまり研究が多くなくて、文献や資料もあまりありません。

近年、農業に株式会社の参入や大規模化を指向する動きがあり、それにともない企業法務の一つとして農業法務に取り組む法律事務所が増え、研究も進みました。ただあくまで企業法務の一環なので、主な関心は知的財産権や表示法などに集中していて、農地利用やそれに伴う私権の整理が進んでいるようには私には見えません。

 これから研究が進んでいくことを祈るばかりです。

3 裁判制度になじみにくい

農業法務に関する相談で多いものの一つに近隣トラブルや集落でのトラブルがありますが、これについて訴訟で白黒つけることが適切でないことが多いです。

白黒つけても、次の日には隣の田んぼでお互い農作業しなければならず、当事者の間でしこりが残るという状態になるからです。そのため、話合いや農事調停による解決が薦められます。

ただそうすると、発言力の強い人がわがままを言えばそれが通ってしまい、優しい人が泣き寝入り、という事態になります。発言力の強い人が周囲の事も考えるいい人ならまあまあ大丈夫なのですが、わがままな人や攻撃的な人だととたんに辛くなります。

 

・・・こんな現状の中、日々執務に取り組み、また精進しています。