ニセ医学問題に限ったことではありませんが、いろいろな社会問題や悩みを法的に考えるとき、以下の3つの視点から考えることが有用です。

①行政法・公法上の問題

基本的によろしくないものを取り締まる場合、まずそれらを法律で列挙して禁止し、違反した者に販売・広告中止や是正の命令を出して、従わない場合なんらかのペナルティを課す、ということが広く行われています。ニセ医学問題では医療法や特定商取引法・景品表示法などの広告規制がその例です。ニセ医学を離れると、交通違反をして違反点数が課せられたり、お店を経営していて保健所や消防署などから指導を受けるなどもこの問題になります。

通常、法規制というとこれか②をイメージする方が多いです。また、行政命令の違反に刑事罰を定めているものも結構あるので、その場合は②の問題になります。

②刑事法上の問題

主に犯罪にあたるかどうか、刑事罰を科すことが出来るのか、という視点です。ニセ医学問題とのかかわりで言うと、医師でないのに医師にしか行えない行為を行った時の無免許医業罪(医師法31条、同17条)、それから患者を死なせてしまった時には業務上過失致死罪(刑法211条)や殺人罪(刑法199条)が問題になります。

ニセ医学問題を離れると、例えば交通違反時に青切符とか赤切符とか渡されて反則金とか罰金を払っているのは、実は刑事法上の問題です。その他刑事裁判は概ねこの問題です。

③民事法上の問題

主に賠償問題になるのがこの問題です。ニセ医学とのからみでいうと、ニセ医学による医療行為で残念ながら死亡してしまったり、後遺症が残ったりする場合、行為者などの損害賠償請求訴訟を提起します。これが民事法上の問題です。

ニセ医学問題を離れると、交通事故なら示談や損害賠償がこの問題ですし、離婚訴訟、債務整理、貸金請求訴訟など民事裁判がこの問題です。私が弁護士業で一番取り扱うのはこの問題です。

ニセ医学問題も多少文献を見ましたが、この③の問題が、専門家も一般の方もあまり詳しく考察されていないように感じました。これが私が公開の場でコラムを書こうと思ったきっかけの一つです。