弁護士として業務をしていると、よく次のようなお話をする方に出会います。「子どもに私の通帳を持って行かれてしまった。通帳を取り返すにはどうしたらいいか」「親族が自分の通帳を管理している。だから自分のお金が引き出せない」といったお話です。

 要するに、預金通帳を持っている人が中のお金を自由に出来る、という誤解です。

実際はそんなことは全然なくて、通帳やキャッシュカードを誰が持っていようが、法律上は通帳の中のお金は口座名義人のものです。本人確認も最近厳しくなってきたので、通帳持っていても引き出せなくなってきましたし、他人の通帳でお金を引き出すとたいていの場合犯罪です。ただ、高齢の両親の生活費を引き出す場合など、事実上金融機関がお金を引き出すことを黙認している場合がある、というだけです。

昔は違っていたんでしょうが、本人確認の必要性が高まり、またマネーロンダリング規制も進んだ現在だと、かつてほどゆるゆるではありません。

ですので親族や他人に通帳を持って行かれた場合でも、別に通帳を取り返さないといけないわけではなくて、すぐに金融機関に行って通帳やキャッシュカードの紛失届と再発行手続をすれば元通りになることがほとんどです。

法律相談サイトの相談でもこの誤解がまだまだあります。誤解が少なくなり、要らない悩みを抱え込む方が少なくなることを祈るばかりです。