まず、人に「死ね」っていったり、ネットで書き込む行為、DMやメールなどで伝える行為は、被害者が自殺しなくても民事上不法行為となって損害賠償責任が発生する可能性が高いですし、悪質なケースの場合警察や検察が強引な解釈で逮捕などに踏み切る場合があるので、ここをお読みの方は、軽々しくそういうことはしないようにお願いします。

 

ここでは、法律相談サイトで頻出の相談である、「死ね」とネットで書き込み、被害者が自殺すると犯罪が成立するのか?という問題について検討していきたいと思います。どういう文脈でそう書き込んだかが分からないと正確な結論は出せないのですが、とりあえず成立する可能性のある犯罪である①殺人罪、②自殺教唆罪、③脅迫罪、④侮辱罪について検討してみます。他にも威力業務妨害罪など、成立する可能性のある犯罪はたくさんありますが、きりがないのでここではこの4つだけ検討します。

まず①殺人罪ですが、ネットやメールで一言「死ね」と書いただけで殺人罪は認められる可能性は極めて低いと思います。判例たとえば最高裁平成16年1月20日決定)では強い暴行・脅迫などをして被害者の意思を制圧していないと殺人罪や殺人未遂罪は認めていません。意思が制圧されているとする他の状況にもよりますが・・・

次に②自殺教唆罪ですが、これは成立してもおかしくないように思います。ただ被害者が自殺に着手しないと未遂罪すら成立しないと解されている(条解刑法第4版補訂版611頁など)ので、書き込んだだけで被害者が特に自殺を実行した場合は成立しないでしょうが・・・

 それから、自殺と「死ね」という書き込みに相当因果関係があるかどうかが自殺教唆罪の成立には必要ですが、それが認められるかどうかはケースバイケースとしか申し上げられないところです。自殺の原因は、職場や学校、家庭、持病などが絡み、特定が困難なことも多いので・・・

③脅迫罪については、それで逮捕されたケースがあるようですので、起訴はされなくても逮捕まではいくかもしれません。「死ね」と書き込むことで被害者に対する殺意、「殺してやる」と同義とみられるケースかと思います。これは「死ね」とどういう形・文脈で書き込んだのかが重要に思います。

④侮辱罪については、直接の判例は見当たりませんでしたが、「在日は死ねよ」などと書かれた文書を職場で配布した会社に対し、従業員である韓国籍の人が不法行為であると訴えたケースの裁判例で、そのような資料を配布した行為が特定の者に行われた場合は刑法の侮辱罪にあたるおそれがあるという裁判例があります(令和3年11月18日大阪高裁判決)。侮辱罪にあたると考えるべきではないとする反対論もあるので断定できませんが、悪質なケースでは警察や検察が動いて立件するということはあり得ると思います。

 

結局ケースバイケースという煮え切らない結論に落ち着かざるを得ないのですが、一応私なりに見解をまとめてみました。法律相談サイトに多いもので(特にずっと昔に書いたものが今罪に問われるのかを心配される方が結構多いのです)。気持ちは分かりますが、そこでも煮え切らない結論を回答せざるを得ないところです。

法律相談サイトではなく、直接の法律相談ならもっと多くのことが答えられるので、気になる型は法律相談の予約を入れて頂きたいところではあります。