法律相談で、「・・・・は違法ですか?」という質問は頻出ですが、いつも悩みます。「違法」もしくは「違法性」という言葉も、紛らわしい言葉の一つです。国語辞典で調べると、「法にそむくこと」であり、法律相談などで相談者の方も同じ意味で使われることがあるのです。しかし法的には違法という場合、だいたい4つくらい意味があります。

法律の世界は、人によりますが、おおむね3つの世界に分類されます。まずは①刑事法。これは犯罪と刑罰に関する法律群です。次に②公法や行政法。これは公的機関とそれによる取り締まり法規になります。次に③民事法。これは私人同士の紛争を規律するものとされています。民法や会社法などが代表例ですが、例えば離婚したとき慰謝料請求できるかどうかとか、交通事故の時損害賠償請求できるかどうかなどにかかわります。たとえば人身事故を起こしたとき、①は加害者に実刑が課されるのか、罰金や反則金で済むのかの問題、②は免許が取り消されたり停止されたりするかの問題、③は被害者やその遺族への賠償問題についての法、と言えば多少分かりやすいでしょうか。

ややこしいのは、①の場合、犯罪が成立しなければ刑罰は科されないのが原則ですが、犯罪とは「(ⅰ)構成要件に該当し(ⅱ)違法で(ⅲ)有責な行為」と定義されることがあるのです。つまり①について、犯罪にあたることそれ自体を違法という方がいるのに対し、この①の(ⅱ)の違法性をいうことがあるのです。ドイツ語の訳語らしいので紛らわしいことこの上ないのですが。この違法性とは何か、というのが、行為無価値説と結果無価値説の対立があったりして、理論的にややこしいです。

①で二つの意味で「違法」とか「違法性」という言葉が使われることがあります。また②の取り締まり法規に反するか、という意味で使う方もいます。新しいビジネスを起こす方が気にするポイントですね。

それから、③の民事法で違法性という場合、多くは損害賠償請求の要件の違法性をいうことがあるのです。民法709条の不法行為に基づく損害賠償請求をする場合、権利侵害が要件とされていますが、これは違法性と読み替えらえれるとされているからです。ご近所トラブルで損害賠償請求する場合など、微妙なケースではこの違法性が問題になります。行為の悪質性と被害の悪質性の相関で決せられるとされていますが、具体的なケースでの判断は難問で、裁判官によって考え方が違ったりします。

 

このように、「違法」という言葉は、①で二つの意味、②、③の意味でだいたい4つくらい意味があるので、相談者の方がどの点を気にされているのか、見極めが大変な時が結構あります。