遺産分割を受任させて頂くにあたり、葬儀費用の取り扱いは悩ましい問題の一つです。葬儀費用って多くの方が支出する基本的なことなのに、誰が負担するかすら学説・判例上一致していないことに、弁護士になり立ての頃は驚きました。法律ってこんなのが多いです。これすら決まっていないの?みたいなことが。

 

学説上、おおむね4つの学説があるとされています。①喪主が負担するべきとする説、②相続人が負担するという説、③相続財産から負担するという説、④慣習条理説、つまり地域の慣習に従って決めるべきという説です。

実務では、まず葬儀費用は遺産分割調停の対象ではないため、葬儀費用について当事者の合意がないと遺産分割調停の協議の対象から外れます。必要に応じ訴訟で決着をつけるということになります。

調停段階では、②や③で当事者の合意が形成できる場合も多いですが、合意が出来ず調停が長引く原因になることもよくあります。

裁判例になったケースでは喪主負担説が多いようです。ただこれは、②や③で相続人・相続財産に負担させるのがおかしいケースが裁判になっているからだ、という分析もあります。

宗教とのからみで、どこまでを「葬儀費用」とみるべきか、という問題もあり、悩ましい問題の一つです。