ここ鶴岡で弁護士をさせて頂いて10年以上になりますが、たまに、疎遠になっていた親や兄弟、その他親族の死亡の連絡が来たが、遺体や遺骨を引き取らないといけないのか、という法律相談があります。ネットでの法律相談でもよく見るテーマです。

結論から申し上げますと引き取り義務は現在はないと考えられています。一応、遺体や遺骨の所有権は祭祀承継者(民法897条1項)にあると解されていますが、これは亡くなった方の指定もなく、特に慣習もなく、遺族間の協議や調停で決まらなければ最後は家事審判で決める決まりになっています。ただ嫌がる親族に家庭裁判所が家事審判を命じるかというと事実上それはないです。事実上そんなことしても法的強制は困難ですし、デタラメな遺体・遺骨の処理をされても問題です。また、法律上、遺体の引き取り義務を命じられた信教の自由を害してしまう恐ります。このあたりが、遺体・遺骨の引き取りを命じない理由かと思います。

ではその遺体や遺骨はどうなるかと言えば、墓地埋葬法9条1項で、火葬までは市町村長がしなければならないとされています。火葬した後の遺骨の処置については法律上規定がないようです。事実上、公営墓地や地元の寺院に無縁遺骨として合祀されることが多いようです。

特に鶴岡は優しい方、責任感ある方が多いので、親族を無縁仏としてしまうことに罪悪感を感じ、遺体の引き取り等を承諾する方も多いです。それ自体は素晴らしいことなのですが、引き取った以上は、責任を持って火葬や葬儀、墓地への埋葬手続き等をきちんとしないと、死体遺棄等の罪に問われることがあります。これらの手続には費用もかかります。

引き取って後悔するくらいなら、初めからちゃんと拒否したほうが、個人的にはいいかと思います。